CubeSatの通信規格

人工衛星の内部の通信規格

人工衛星内部のコンポ―ネント同士の通信は、コンピューターと同じように、特定の通信、信号規格で通信します。衛星設計においては、それぞれの通信規格の特性を十分把握する必要があるので、今回はそれらについての知識を備忘録的に整理します。

参考文書

新ヒカリモノズ: シリアル通信・UART・RS232C・RS422・RS485とは

RS485・RS422・RS232Cの違いとは|電圧・規格・距離を比較

基本的な通信規格

通信方式には以下の二つに大きく区別されます

  • シリアル通信

    - 一つの伝送路に次々に情報を送る

    - メリット:システムがシンプルになる

  • パラレル通信

    - 複数の伝送路で、同時に情報を送る

    - メリット:データの伝送速度が速い

    - デメリット:実装コスト

そして、シリアル通信の規格には、代表的なものとして以下があります。

  • I2C通信

  • SPI通信

  • UART通信

UARTとは、本来集積回路のICのことをさすが、それを用いたRX, TXでの通信をUARTと呼ぶことが多い。 それぞれの特徴は下記の通り。

I2C

  • マスターが複数、スレーブが複数の状態で通信できる。
  • SCL, SDAの2本線で通信。SDAは送信、受信を同じSDAで行う。同期式 (SCLがクック)。

SPI

  • マスター1に対して、スレーブが複数
  • 3本、あるいは4本の伝送路。送信、受信の配線を分けているため、同時に送受信が可能である。同期式 (SCLがクック)。

UART

  • 1対1の通信
  • GND含め送信、受信の3本で実施。通信速度を決めて、非同期で行う。

CubeSatで多い通信規格

CubeSatで最も多い通信規格はI2Cであるという調査があります。通信伝送路が少なく、多対多の通信ができることが特徴です。一方で、不具合が最も多いといわれています。 その原因として、I2Cには差動仕様がない、ハンドシェイク、コントロールのための独立ラインがない、多くのノードと結合しすぎる傾向にあるなどが考えられています (下記運用)。 f:id:spaquid:20220108091448p:plain 引用: Bouwmeester, Jasper, Martin Langer, and Eberhard Gill. "Survey on the implementation and reliability of CubeSat electrical bus interfaces." CEAS Space Journal 9.2 (2017): 163-173.

RS232C, RS422, RS485

衛星の設計では、上記の単語ではなく、インターフェースがRS422だ、とかそういう単語が使われてます。これらは、UARTに含まれるシリアルインターフェースの規格です。 伝送速度は、現在では10Mbps程度で15m。 RS232Cは一番シンプルで、信号線とグラウンド線による不平衡伝送 (シングルエンド、伝送路一本)。でやっているので、通信速度が遅く、ノイズに弱い。 そこで改良用に出てきたのがRS422で、平衡型のインターフェースでノイズに強くなります。(コモンモードノイズに対して。、グラウンドを通って流れる全線に共通で入るノイズ)。電圧の規定もあり、Highの時5V or 3.3Vを選択できます。 RS485は、複数の機器で通信できる規格である。線を共有し、必要なタイミングのみ、データラインのアクティブな状態になります。

TTL, CMOS, LVTTL, LVDS

インターフェースでは、上記の通信規格以外にも、信号を送る電圧レベルを規格することがあります。TTL, LVTTL, CMOS, LVDSはその例である(正確には電圧レベルを指定する論理回路のことを指す)。 - TTL, LVTTL - 出力側はLOWとして0V - 0.4V以下、HIGHとして2.4V以上TTLなら5V以下、LVTTLは3.3V以下 - 入力側はLOWは0.8V以下、HIGHは2.0V以上 - CMOSは、Vddの入力に対して、HIGHは0.5-0.7Vdd, Low 0.2Vdd - LVDSは差動信号で、3.5mAの定電流により、終端100Ωの電圧差から、350mVの差動信号として送信する。高速データ通信ができる。

組み合わせ, 違い

例えばSPIだと、LVDSと組み合わせて、差動電圧でノイズ耐性を強化することができます。 U232-Cではとは信号規格が異なり、5V以上でLow , -5V以下でHIGH (負論理) だが、LVTTLは前述の通りであり、UART-LVTTLという形で2本の伝送路で使用する通信をLVTTLにする場合とRS232はさらに異なります。

どの規格を使えばいい?

何かコンポーネントを購入し使用する場合、すでに通信の規格が規定されている場合が多いと思われます。CubeSatだとI2Cが多いと言われていますが、前述のとおりI2Cは不具合が比較的多いと言われていてリスクが大きいです。可能であれば、RS422など、差動信号でノイズに強い通信規格にするのが良いと思います。ただし、こちらも送信可能速度や、コンポ間の接合関係が決まってしまうため、それらの要求が厳しければそれに合った通信規格を使う必要があるかと思います。

以上となります。まだまだこの分野、勉強したてなため、誤っていたらご指摘いただけたらと思います。